全ての始まりは、騎士任官式典パーティーの夜――

王国の若き騎士候補生、リュウ・ドナルベインは、
式典の真っ最中、王侯貴族の集う席上で階段に躓いてしまう。
派手にすっ転んで姫様を巻き込んで倒れてしまい、公衆の面前で恥ずかしい姿を晒すことに。

死を命じられてもおかしくない大失態。騎士道不覚悟の不敬罪。
幸か不幸か、無礼討ちという最悪の事態は免れたものの……
リュウ・ドナルベインの転落人生は、ここから始まるのである。

そんな彼に下された辞令は、辺境の村で国境警備隊の新任隊長になること。
誰の目から見ても左遷。地理上の任地を見ても文字通りの左遷。

「あの……ちなみに、どんな場所なんですか? 俺の任地って」

恐る恐る尋ねるリュウに、返ってきた答えは……

「空気が美味くて、緑がたくさんあって、あとは……そうだな。空気が美味い」

そう。彼の任地は、想像を遥かに超えた田舎村。
必要以上に空気が美味くて、緑が豊富すぎる場所。

「新しい隊長殿ですねっ、お待ちしておりましたっ」

びしぃ! と自分の額にチョップをかます奇妙な敬礼で、
新任隊長のリュウを迎え入れてくれたのは――
明らかに年下の村娘ロコナと、
根っからのむっつりスケベな老人ホメロの2人だけ。

「こ、こんなのウソだぁぁぁぁぁッ!」

アクの強い仲間たちと送る、ファンタジックな田舎生活。
次々に巻き起こる、トラブルとアクシデント。

……そしてある日、ポルカ村に謎の貴族少年がやって来る。
態度がデカく、世間知らずで負けず嫌いのお坊ちゃま。
その正体は……リュウの左遷の原因となった、あのお姫様だった!

村に伝わるという幻の花を探して、てんやわんやの大騒ぎ。
能天気で平和な、でも本人たちは必死な。
そんなドタバタ辺境物語が、始まろうとしていた。